今回は、家族の転勤がきっかけで新しい学校に馴染めず不登校になった伊藤健太さん(仮名・現在31歳)のエピソードをお届けします。
慣れない環境の中で孤独を感じ、学校から離れる決断をした彼がどのように自分を取り戻し、新しい道を歩み始めたのかを伺いました。

同じような状況に悩んでいたら、参考になれば嬉しいです。
新しい学校に馴染めなかった理由
――健太さん、転校先で馴染めないと感じたのはどのような瞬間でしたか?
「転校初日の自己紹介からです。全然知らないクラスメイトの前で話すのがすごく緊張してしまって、『どこから来たの?』と聞かれても言葉が詰まってしまったんです。その時に自分だけ浮いているような気がして…。そこからクラスに馴染むのが難しいなと感じ始めました」
――クラスメイトとの関係はどうでしたか?
「悪くはなかったですが、深く関わる友達ができなくて…。話しかけられることもありましたが、休み時間は基本一人で過ごしていました。昼休みも教室の端でスマホをいじっていることが多くて、みんながグループで楽しそうにしているのを遠くから見ている感じでした」
不登校に至るまでの経緯
――学校を休むようになったきっかけは何だったのでしょうか?
「体育の授業中にみんなの前で失敗したのがきっかけです。転校して間もない頃、体育のドッジボールでボールを取れなかった時、クラスメイトが冗談半分で『下手すぎる』って笑ったんです。みんなも笑っていて、その瞬間に『ここには自分の居場所がない』と思ってしまいました。それから学校に行くのがどんどん怖くなっていきました」
――その後はどのような状態でしたか?
「朝起きると学校のことを考えて気分が悪くなり、無理やり行こうとするとお腹が痛くなったり…。最初は頑張って登校していましたが、最終的には家にいる時間が増えていきました。両親には『体調が悪い』と言って休んでいました」
不登校中の生活
――学校を休んでいる間、どのような日々を過ごしていましたか?
「ほとんど家に引きこもっていました。リビングにいると家族に見られるので自分の部屋に閉じこもって、テレビを見たりスマホをいじったりしていました。でも何をしても気持ちが晴れることはなくて、ただ時間が過ぎるのを待っているような感覚でした」
――友人や家族との関わりはありましたか?
「友人とはほとんど連絡を取らなくなりました。『学校に来ないの?』と聞かれるのが怖くて、メッセージが来ても返事をしませんでした。家族とは最低限の会話だけで、何も話したくない気持ちが強かったです」
家族との関係の変化
――家族の反応に変化はありましたか?
「最初は母がすごく心配してくれていましたが、私が何も話さないのでだんだんイライラするようになりました。『学校に行けないなら理由を話して』と何度も言われましたが、どう言えばいいのかわからなくて…。父は転勤先の仕事が忙しくてあまり家にいなかったので、母とのやりとりがほとんどでした」
――何かきっかけで家族と話すようになったのでしょうか?
「ある日、母が『無理に学校に行かなくてもいいけど、これからどうしたいか考えよう』と言ってくれました。その言葉で少し心が軽くなり、自分の気持ちを話してみようと思いました。それが初めて本音を話せた瞬間でした」
再起のきっかけ
――学校以外の選択肢を考え始めたのはその後ですか?
「そうです。母がフリースクールを調べてくれて、そこに行ってみることにしました。最初は緊張しましたが、先生やスタッフがすごく親身になって話を聞いてくれたんです。『ここでは何もしなくても大丈夫だよ』と言われて、少しずつ安心感が生まれました」
新しい環境での挑戦
――フリースクールではどんな経験をしましたか?
「まずは自分のペースで過ごすことを覚えました。勉強も無理せず、自分がやりたい科目だけをやらせてもらえて楽でした。それから、自分と同じように学校に行けなかった子たちと話す中で、共感できる部分が多くて少しずつ心が軽くなりました」
通信制高校への進学
――通信制高校を選んだ理由は何だったのでしょうか?
「フリースクールで自信を少し取り戻したので、次はもっと学びたいと思うようになりました。通信制高校は自分のペースで勉強できるので無理なく続けられると思いました。進学してからは勉強以外にもいろんな活動に挑戦できるようになりました」
社会人としての現在
――現在のお仕事について教えてください。
「今は営業の仕事をしています。人と話すのが苦手だった自分が、今では仕事でお客さんと話すことが楽しいと感じられるようになりました。不登校の経験があったからこそ、いろんな人の気持ちに寄り添える自分がいると思っています」
同じ悩みを抱える人へのメッセージ
――最後に、同じように悩んでいる方にメッセージをお願いします。
「自分を責める必要はないです。環境が合わないと感じるなら、新しい場所を探すことは決して逃げではありません。一人で抱え込まず、誰かに相談するだけでも心が軽くなることがあります。少しずつでも、自分に合った道を見つけてほしいです」
まとめ
健太さんのエピソードは、転校や環境の変化に悩む方々にとって心の支えとなるでしょう。

新しい環境を見つけて少しずつ自信を取り戻した彼の経験が、いま同じ悩みを抱えている方にとって希望の光となれば嬉しいです!