今回は、家族の転勤で転校を余儀なくされ、新しい学校に馴染めず不登校を経験した加藤陽太さん(仮名・現在31歳)のエピソードをお届けします。
15歳での苦しい時期をどう乗り越えたのか、彼のリアルな声を聞いていきます。

同じような状況に悩む方々にとって参考になる内容を目指してまとめています。
転校が引き金となった不登校
――15歳のときに家族の転勤で転校されたそうですが、そのときの状況を教えて下さい。
「はい。中学3年生の夏休み明けに、父の仕事の都合で地方に引っ越しました。それまでずっと地元で過ごしていたので、友達も多かったし、転校するのがすごく嫌だったんです。でも、反対してもどうにもならないと思って、仕方なくついていきました」
――新しい学校での初日はどんな感じでしたか?
「正直、最初から馴染める気がしなかったです。クラス全体が仲良くてグループが出来上がっている感じで、入る隙間がないように思えました。自己紹介のときも緊張して何を言ったのか覚えていません。それに、話しかけられることもほとんどなかったんです」
学校生活で感じた孤独
――クラスで孤立を感じるようになったのはいつ頃ですか?
「入学してすぐですね。休み時間になるとみんながグループで盛り上がっている中、僕は一人で教室の隅に座っていました。最初の頃は自分から話しかけようと努力したんですけど、会話が続かなかったり、なんとなく避けられているような気がして、だんだん話すのが怖くなりました」
――部活動には参加されましたか?
「もともとサッカー部に入っていたので、新しい学校でも続けようと思ったんですが、部活の雰囲気が地元とは全然違っていて。それぞれが既に仲良しで、僕が入ると空気が変わるような感じがして、結局1週間くらいで辞めてしまいました」
家族との関係と不登校
――家族とはこの頃どのような会話をされていましたか?
「家族にはあまり話せなかったです。父は仕事で忙しいし、母も引っ越しの準備や新しい環境に慣れるのに手一杯で。夜ご飯のときに『学校どう?』って聞かれるくらいで、深い話は全然しなかったですね」
――ご両親は陽太さんの状況に気づいていたと思いますか?
「多分、気づいてはいたと思います。でもどう声をかけていいか分からなかったんじゃないかと思います。僕もその時は自分の気持ちをどう伝えたらいいか分からなくて、家でもずっと無口でした」
不登校中の生活
――学校に行かなくなったのはどのようなきっかけですか?
「ある朝、急に学校に行くのが怖くなってしまったんです。教室に入るとみんなの視線が気になるし、自分がいると場が白けるような感じがして。結局、その日から行かなくなりました」
――家ではどのように過ごしていましたか?
「最初はゲームをしたり、テレビを見たりして時間を潰していました。でも、だんだんそんなことも楽しくなくなって、部屋にこもって寝ている時間が増えました。友達からの連絡もほとんどなくて、本当に孤独でした」
再起へのきっかけ
――そこから前を向くきっかけは何だったのでしょう?
「母が思い切って僕に向き合ってくれたことが大きかったです。ある日、泣きながら『学校が嫌なら無理に行かなくてもいい。でも、家族として一緒に考えたい』って言ってくれたんです。それで、初めて自分の気持ちを話すことができました」
――他にも支えになったものはありましたか?
「母の提案でカウンセリングを受けるようになったんです。最初は抵抗があったんですが、話を聞いてもらうだけで気持ちが少しずつ楽になっていきました。あと、昔の友達が連絡をくれて、『いつでも話聞くよ』って言ってくれたのも救いでした」
新しい環境での挑戦
――その後、通信制高校を選ばれたとのことですが、決断の理由は何ですか?
「通学する普通の高校には戻る自信がなかったんです。通信制なら自分のペースで進められるし、通学日も少ないので気楽だと思いました。それに、学び直すチャンスが欲しいと思っていました」
――通信制高校での生活はいかがでしたか?
「想像以上に楽しかったです。同じように不登校を経験した子たちが多くて、共感できる話がたくさんありました。少人数の授業だったので先生との距離も近くて、自分のペースで学べるのが合っていました」
社会人としての歩み
――現在のお仕事について教えて下さい。
「今は物流関係の仕事をしています。体を動かす仕事が好きなので自分に合っていますし、職場の人間関係も良好です。不登校を経験したことで、人と距離を取るのが上手になったというか、冷静に相手を見れるようになった気がします」
――不登校経験が今の生活に活きていると感じますか?
「はい。過去の自分を否定しないで受け入れることができるようになったのは大きいです。それが今の自分を支えてくれています」
同じ経験をしている人へのアドバイス
――最後に、同じように悩んでいる方にメッセージをお願いします。
「無理に学校に行こうとしなくても大丈夫です。自分のペースでいいので、小さな一歩を踏み出してみてほしいです。一人で抱え込まずに、誰か信頼できる人に話してみるだけでも気持ちが楽になるはずです」
まとめ
加藤さんの経験は、環境の変化による孤独や不登校に悩む方々に共感を呼ぶものです。
不登校から新しい環境で自分を取り戻し、前に進む姿は、多くの人にとって勇気と希望を与えるものだと感じました。

このエピソードが読者にとって何かのきっかけになれば幸いです。